『自由研究には向かない殺人』がおすすめの人
海外ミステリを読んでみたい
自由研究をしたことがある
シリーズものが好き
今回はホリー・ジャクソンさんの『自由研究には向かない殺人』のあらすじや感想を紹介します。
これから読む人向けに、ネタバレなしで解説していますので、安心して読み進めてください!
\PR:少しだけ宣伝させてください!/
- どれだけ読んでも月額980円!
- 200万冊以上の小説・ビジネス書・漫画・雑誌etcが読み放題
- スマホ・タブレット・専用端末…いつでもどこでも楽しめる!
※Amazon公式サイトに移動します。
『自由研究には向かない殺人』のあらすじ・登場人物
この投稿をInstagramで見る
舞台 | イギリスの架空の町 (リトル・キルトン) |
時代 | 2017年8月~ |
おもな登場人物
■ピップ
- 17歳の主人公
- 可愛がってもらったサル・シンの冤罪を晴らすために、自由研究として調査を始める
■アンディ・ベル
- 5年前に失踪した、当時17歳の少女
- 遺体は見つかっていない
■サル・シン
- アンディの恋人
- アンディの失踪後に自殺
- 犯人だと結論づけられた
■ラヴィ・シン
- サルの弟
- 「殺人犯の弟」として白い眼で見られる
- ピップに協力する
この作品をひとことで言うなら、少女が自由研究に取り組む物語。
日本での自由研究といえば、小学生の宿題で、工作や観察日記などが定番ですよね。だけど、イギリスの自由研究は少し意味が異なります。
主人公のピップは、5年前に地元で起きた17歳の少女、アンディ・ベルの失踪事件を調べることに…
この事件は、アンディのボーイフレンドであるサル・シンの自殺によって、サルが犯人だと結論づけられました。
でも、少女の遺体は今も見つかっていません。
それに、サルは真面目で優秀な生徒で、ピップも可愛がってもらっていました。
なのでピップは、サルは犯人ではない、もしかしたらアンディも生きているかも……と疑い、調査を始めます。
だけど、ニュースなどから情報を集めるだけじゃ、新事実は見つからないはず。
そこでピップは、「自由研究」を口実に、関係者にインタビューをしていくことにしました。
すると、次々と見つかるサルの冤罪の証。そして新たに浮かぶ容疑者たち。ピップの身近な人物にも怪しい事実が見つかり……
『自由研究には向かない殺人』の見どころ・キーワード
イギリスと日本の違い
海外小説を読むうえで避けられないのが、日本との文化の違い。海外の文化も知れる、というとポジティブですが、「ん?これどういうこと?」という疑問が湧いてスムーズに読み進められないこともありますよね。
なので、ここでは作中でたびたび登場する単語について、簡単に解説します。
グラマースクール
ピップたちは、リトル・キルトンの「グラマースクール」に通っています。
グラマースクールとは、11歳~18歳までの生徒が通う中等教育機関であり、日本でいう「中高一貫校」といったイメージだそうです。
また、大学進学を前提にしており、日本でいうところの「公立の進学校」だとか。
カラミティ・パーティ
作中では、「カラミティ・パーティ」が1つのキーワードとなります。
「カラミティ・パーティ」とは、簡単にいうと学生たちのホームパーティーのこと。ただ、お酒あり、ドラッグありの日本では考えられないパーティなんです。
特にピップたちは進学校に通う優秀な生徒です。そんな生徒たちが、夜な夜な「カラミティ・パーティ」に参加しているのは、日本の感覚では少し受け入れ難かったですが、、、
まぁ、そこは文化や国民性の違いだと受け入れるしかないですね。
車の免許
ピップが車で通学したり、調査に行ったりしていたので、「高校生で車?」と思ったのですが、イギリスは17歳から免許が取れるみたいです。
日本でも18歳(高校3年生)から免許は取れますが、通学している人はあまり見ませんよね。
イギリスの自由研究(EPQ)
イギリスの自由研究はEPQ(Extend Project Qualification)と呼ばれています。日本のような小学生の宿題ではなく、大学受験にも活用できる「資格」として扱われているそうです。
日本 | イギリス | |
対象 | 小学生 | 高校生 |
目的 | 宿題 | 資格 |
イギリスの受験システムでは、高校卒業(大学入試)にAレベルの評価を受ける必要があります。さらに選考の際には、EPQなどが考慮されることも。
そのためピップは、Aレベルのテストの勉強に加え、EPQとして「アンディ・ベルの事件の調査」をしているということです。
日本の自由研究を想像していると、ちょっと混乱するかもしれません。
次々と浮かぶ容疑者【伏線のオンパレード】
物語は、ピップ目線での調査の様子と、インタビューなどが書かれた「作業記録」が交互に構成されています。
- ピップ:「アンディの件についてインタビューしても良い?」
- 作業記録:「〇〇へのインタビュー」
- ピップ:インタビューで調べた情報を確かめに行く
- 作業記録:新たに手に入れた情報(手帳のイラストなど)
作業記録パートが太字になっていたので、最初は「こっちの方が重要なのかな?」と思っていました。
でも、実際はどちらも重要。次々と新情報が見つかり、容疑者が現れるので、一行も見逃せません。。。
あなたは作中に散りばめられたヒントに気付き、事件の真相を突き止められますか?
『自由研究には向かない殺人』の感想
読みやすさ | ★★★★ | 海外ミステリデビューにも! |
驚き | ★★★★ | まさかあの人が…… |
結末のスッキリ度 | ★★★★ | 伏線回収! |
人物の魅力 | ★★★★★ | ピップもラヴィも好き! |
文章の美しさ | ★★★ | ユーモアのあって読みやすい! |
テーマ性 メッセージ性 | ★★★ | 純粋にミステリを楽しめる |
内容の難しさ | ★★ | イラストもあってわかりやすい! |
個人的な理解度 | ★★★★ | 真相には気づけなかったけど! |
おすすめ度 | ★★★★★ | 今一番推してます! |
キャラクターの魅力
僕は小説の登場人物の名前を覚えるのが苦手です。海外小説だと特に。
ですがこの作品は、ピップやラヴィをはじめ、魅力的なキャラクターばかりなので、スムーズに覚えられました。
「〇〇ってこういうところあるよねえ」なんて、一人ひとりの好きなとこが自然に浮かんでくるんです。
あとは、イギリス・ジョークというのか、ちょこちょこ挟まるユーモアも素敵。
500ページほどある少し長めの作品ですが、夢中になってあっという間に読み終えてしまいました。
無理のない調査
警察が「自殺」だと判断した事件について、なんの伝手もない高校生が新事実を見つける。現実的に考えて、かなり難しいですよね。
なのでこのような設定は、無理のある展開になってしまうリスクもはらんでいると思います。
しかし『自由研究には向かない殺人』では、インターネットなど、高校生だからこそできる調査方法を駆使していて、不自然さがありません。
(多少強引な手段に出た場面もありますが、、、)
また、名前を聞けば「あぁ、あの子ね」となんとなく顔が浮かぶような小さな町なのもあり、自然な流れで情報が集まっていきます。
とはいえ、スムーズに進みすぎても、ミステリーとして面白くない。そのバランスが取れた作品だと思いました。
いつしか敏腕探偵のように見えてくるピップですが、ちゃんと(?)ティーンエイジャーらしい悩みにもぶつかり、「青春」を感じさせてくれるところも魅力!
終わりに向かう儚さ
自由研究と聞くと、僕は小学生の時のクーラーガンガンの図書室を思い出します。夏休みの終わりが迫ってきたら、学校の図書室に籠もって宿題に取り組む。その帰り道の夏の終わりの匂いというか、「あと◯日で終わっちゃうなあ」という儚さを思い出します。
そしてその思い出があるからなのか、今でも夏になると「終わってしまう儚さ」を感じてしまうんですよね。
この作品にも、そんな「儚さ」を感じました。物語のスタートは8月ですが、夏休みを描いた作品ではないですし、夏の終わりへの「儚さ」とはまた違います。
それは「ピップの卒業が迫っている」ことと、「事件が解決に向かっていること」に対する気持ち。
「夏休みの終わり」と同じように、ピップにも「高校生(グラマースクール)の終わり」が迫っています。ピップは大学生活も楽しみにしていて、今は事件に没頭しているので、僕が感じたような思いが直接的に描かれているわけではありません。ですが、勝手に卒業間近の高校生の刹那的な輝きを感じて、しみじみとしてしまいました。(これが歳をとるということか)
また僕は、純粋にこの作品を開いて50ページくらいで「好きだ!!!」となりました。なので、終わってほしくない。事件の真相は早く知りたいし、一つの謎が解け、新たな謎が生まれるたびにワクワクもする。
でも、この作品をもっともっと読みたい。
そんな思いが「夏休みの終わり」への儚さとリンクして、なんともいえない気持ちになりました。
文体にはユーモアがあって、比較的明るい作品なのに、どうしてあんなにノスタルジーを感じるんだろう。
『自由研究には向かない殺人』の基本情報
『自由研究には向かない殺人』のあらすじ・感想:まとめ
今回はホリー・ジャクソンさんの『自由研究には向かない殺人』を紹介しました。
次は続編の『優等生は探偵に向かない』がおすすめ!