『愛されなくても別に』がおすすめの人
家族に関する悩みがある
将来、家庭を持ちたいと思っている
装丁にビビッときた
今回は武田綾乃さんの『愛されなくても別に』のあらすじや感想を紹介します。
これから読む人向けに、ネタバレなしでの解説になっていますので、安心して読み進めてください。
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『愛されなくても別に』のあらすじと登場人物
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登場人物
■宮田陽彩
- 大学生(19歳)
- 母と2人暮らし
- 怠惰で浪費家な母のためにバイトに明け暮れる
■江永雅
- 宮田と同じ大学、バイト(21歳)
- 父は「人殺し」?
- 中学から母に売春を強制される
■木村
- 宮田と同じ大学
- 「大学生の本分は勉強」
- 親からの仕送りで生活
■堀口
- 宮田と同じバイト
- 調子の良い男だが、時折核心を突くことを言う
「遊ぶ時間? そんなのない。遊ぶ金? そんなの、もっとない。」
大学生の宮田は、友だちを作る時間もないほどバイトに明け暮れていました。なぜなら、母親を養うために毎月8万円を家に入れ、学費も自分で払っているから。
母親は家事もせず、夜勤から返ってきた宮田が朝ごはんを作っています。さらに母親は、スマホゲームに課金する浪費家です。
そんな母親でも、宮田は"愛されている"し、自分も"愛している"はずだと思い込むようにしていました。
だって、家族だから。
そんな宮田の人生は、ある女性と出会って一変します。
彼女の名前は、江永。中学生から親に売春をさせられ、ヤバい写真をばらまくと脅されながらも親を"捨てた"女子大生。父親が殺人犯という噂も…
"家族"に対する一般的な価値観とは異なる考えを持った江永。彼女との出会いによって、宮田は"家族"が絶対的な世の中で別の生き方を見つけていきます。
学費のため、家に月8万を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。浪費家の母を抱え、友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らす――そんな宮田の日常は、傍若無人な同級生・江永雅と出会ったことで一変する!
愛情は、すべてを帳消しにできる魔法なんかじゃない――。
息詰まる「現代」に風穴を開ける、「響け! ユーフォニアム」シリーズ著者の会心作!引用:Amazon
『愛されなくても別に』の見どころ・キーワード
3つの親子のカタチ【毒親】
『愛されなくても別に』には、3つの親子が登場します。
作中の文章とともに、それぞれの親子の特徴をさくっと解説。
宮田
プレゼントをラッピングするなんて、私はその時まで知らなかった。親はそんなこと教えてくれなかったから。これぐらい常識でしょと平然と言ってくる奴らは、私に常識を教えてくれない。常識を知る機会がない人間がいることを想像すらしない。
P173
怠惰な母のもとで育ち、「常識を知る機会」がなかった宮田。
宮田は母親と暮らし続けていますが、それは誰のためなのでしょうか。
江永
まぁとにかく、色々やったよ。中学の時のお母さんにやれって言われてさ、ずっとそうやって生活費を稼いできた。
P52
お金に困っている宮田に、風俗はやらないのかと聞いたときのセリフです。
「やれって」とは売春のこと。江永は中学生の娘に売春をさせる親のもとで育ちました。
そして今は、親を”捨て”、一人で暮らしています。
木村
バイトバイトって、そんなのが言い訳になると思ってるの?お金お金って、ホント卑しい。大学生の本分は勉強なのに。
P43
ノートを見せてほしいと宮田にお願いされたときの木村のセリフです。
生きるためにバイトをしなくてはいけない宮田と、「大学生の本分は勉強」だと言えてしまうほど余裕のある木村。
これだけで木村がどのように育てられてきたのかが見えてきますね。
この3つの親子のカタチを比較しながら読むことで、この作品をより深く読めると思います!
シスターフッド
シスターフッドとは、1960年代から70年代にかけての女性解放運動でよく使われた言葉で、男性優位の社会を変えるため、階級や人種、性的嗜好を超えて女性同士が連帯することを表すもの
もともとは上のような意味で使われていた言葉ですが、近年はもっと広義的に「女性の連帯」を表す言葉として使われている気がします。
この作品は、社会の「家族」に対する幻想と戦うために、宮田と江永が協力するという点で、シスターフッドの作品だと言って良いでしょう。
『愛されなくても別に』と調べると「百合」という言葉が出てきたのですが、個人的にはいわゆる「百合」(同性愛)の物語ではないと思うんですよね。
みなさんも宮田と江永の関係性について考えながら読んでみてください!「百合」だと思う方もいるかもしれませんね。
「愛されなくても別に」の意味は?
愛し愛されることが幸せだと教えられてきました。
特に「家族」については、「家族愛」「無償の愛」「親子の絆」といった言葉で、神格化されているような印象があります。
家族と仲が良い人は「良い人」で、家族仲が悪いと「親不孝」だとか「まだ反抗期?笑 大人になれよ」とか言われちゃう世の中。
そんな社会のなかで、「愛されなくても別に」という言葉はどんな意味を持つのでしょうか。
親子という呪縛から逃れられなかった宮田が江永と出会って変化していく姿を通して、現代における「愛」や「家族」について考えさせられました。
『愛されなくても別に』の感想と印象的な文章
「これ、言っていいの?」
それが率直な感想でした。家族愛は神聖なものである世の中で、「家族は幻想」だなんて言っていいの?と。
僕はありがたいことに家族のトラブルを抱えていません。
でも、「話が合う!」とか「一緒にいて楽しい!」と思ったことは一度もありません。(好きとか、嫌いとか、そういう感情も特になく、「家族」として接しています)
なので、家族と仲が良いことがステータスになるような社会に疑問を感じていました。「親子だからって性格も趣味も合わないとダメなの?」って。
だけど、「家族」というものに対する否定的な意見って、受け入れられないんですよね。誰にも。なので、この作品を読むまでは胸の奥の奥にしまっていました。
だから、この作品を読んだときの衝撃というか、「言っちゃったよ」という驚きはすごかったです。
ただ、この作品は家族の仲が良い人たちの「家族愛」を否定するものではありません。家族から「愛されなくても別に」生きていいよね、と寄り添ってくれる物語です。
なので、家族との関係に悩んでいる人はもちろん、家族仲が良い人にも読んでほしい!
あとは「親のエゴ」が描かれているので、将来子どもがほしい方やすでに子どもがいる方にもおすすめです。
印象的な文章
なぜ世の中に家族という言葉が蔓延っているのか、本当は私も分かっている。幻想だからこそ、それを守ろうとしている人々は強いのだ。家族であるというただそれだけの理由で、他人を育成する。子育ては手間が掛かり、金も掛かる。それでも尚、子供という一個人を育て上げるのだから、親という生き物は尊ばれるのだ。
P93
分からなかったこと、理解出来なかったことを聞き返さない。全てをなあなあにしておけば丸く収まると高を括っていて、そんな自分が優しい人間だと無邪気に信じ込んでいる
P225
みんなさ、どうして家族なんてファンタジーを信じられるんだろう。明日、自分の親が誰かを殺したらどうするの。自分の子供が誰かを殺したら、どうするの。加害者の家族だとか言って、色んなやつを中傷してる人たちは、自分の身内が絶対に人を殺さないって信じてるのかな。
P248
『愛されなくても別に』と武田綾乃さんの基本情報
武田綾乃さんのプロフィール
生年月日 | 1992年 |
デビュー作 | 『今日、きみと息をする。』(2013年) |
代表作 | 『響け! ユーフォニアム』シリーズ |
受賞歴 | 吉川英治文学新人賞(2021年) |
『愛されなくても別に』武田綾乃のあらすじ・感想:まとめ
武田綾乃さんの『愛されなくても別に』を紹介しました!
つぎは『嘘つきなふたり』を読みたい!