白々と光る刃の先を押し当て、力いっぱい引く。苦痛で捻れる顔を見ながら、もっと、もっとと思った。
『レモンと殺人鬼』くわがきあゆ/講談社
『レモンと殺人鬼』がおすすめの人
伏線回収がすごい作品を読みたい
レモンが好き
『このミス』大賞シリーズが好き
今回はくわがきあゆさんの『レモンと殺人鬼』をあらすじ・見どころ・感想を紹介します。
ひとことで言うなら、殺人事件の「被害者」である妹が保険金殺人の「加害者」だったという疑惑の真相を追う物語!
ネタバレなしで紹介するので、安心して読み進めてみてください。
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『レモンと殺人鬼』のあらすじ・登場人物・相関図
舞台 | 日本 (架空の町) |
時代 | 2021年頃 (マスク社会) |
登場人物
- 小林美桜:大学職員(派遣)
- 小林妃奈:美桜の妹。保険外交員(派遣)
- 小林恭司:美桜の父。海辺で洋食屋「グリル那見」を営む
- 佐神翔:美桜の父を殺人
- 渚丈太郎:美桜が務める大学の生徒。
- 海野真凛:美桜の元同級生。渚の彼女
- 桐宮証平:美桜が務める大学の生徒。「そのあとクラブ」を運営。
- 銅森一星:筑野バル経営者。妃奈の元恋人
- 金田:銅森の同級生で右腕
- 蓮:「グリル那見」を見ていた中学生
小林美桜は、海辺の洋食屋「グリル那見」を営む両親のもとに生まれた。経営に余裕はないものの、幸せな家庭が築かれているはずだったが、父の恭司が当時10代の少年・佐神翔に殺されてしまう。
大黒柱を失った小林家は崩壊。母は美桜と妹の妃奈を置いて失踪し、姉妹はそれぞれ親戚の家に引き取られて別の場所で育った。
大学に進学する余裕のない2人は、ともに派遣社員として就職し、定期的に会っては互いの境遇を嘆いていた。しかし、美桜にとって唯一の肉親である妃奈も、何者かに殺されてしまう。
「佐神が出てきたんだって」
最後に妃奈と会った日に告げられた一言が頭をよぎるなか、SNSや週刊誌では事件の被害者である妃奈が保険金殺人の加害者だったという疑惑が生じる。
かつて、妃奈の元恋人Aが事故死した際、保険外交員としてAに生命保険加入を勧めた張本人である妃奈が、生命保険金の3,000万円を受け取っていたらしい。
さらに、敏腕経営者として知られる銅森も、インタビューにて保険金詐欺に遭いかけた過去を暴露。SNSでその相手が妃奈だと特定され、美桜はマスコミに追いかけられることになった。
妹の潔白を信じる美桜は、銅森の会社に突撃するも門前払い。落胆するも、ビルの前である男に出会い……。
妃奈が保険金殺人をしていたのか。そして、妃奈を殺した犯人は?
謎に謎が重なり、衝撃的な真相が明らかに――。
『レモンと殺人鬼』の見どころ・キーワード
行動原理
すべての小説に言えることですが、登場人物それぞれの行動原理に着目すると、より一層おもしろいと思います。
行動原理とは、ものすごく簡単に言うと「何を基準に行動しているのか」ということ。
- お金を稼ぎたい
- 家族を守りたい
本書の序盤から読み取れる、登場人物たちが重点を置いていることはこんな感じ。
- 小林美桜:妹の疑惑を晴らしたい
- 渚丈太郎:真相を明かしたい
- 桐宮証平:子どもたちを守りたい
ただ、これはあくまでも序盤を読んだ僕の印象です。なので、読み終えたときには違った印象を抱くかもしれません。
物語のなかで登場人物たちの信念が変わったのか、あるいは最初からすべて一貫した軸を持って行動していたのか。
■考え方が変わるケース
利益が第一の悪役 → 慈善事業を始める
■一貫している(読者が気付いていなかった)ケース
利益が第一の悪役 ← 実は両親の借金返済に追われていた
※『レモンと殺人鬼』とは一切関係のない例です!
「なぜその行動を起こしたのか」に注目してみてください!
タイトルの意味は?
『レモンと殺人鬼』というタイトルで刊行されましたが、『このミス』大賞の文庫グランプリを受賞した際は『レモンと手』という仮題だったようです。
どちらにも共通しているのは、「レモン」という言葉。物語でも序盤から度々登場します。言うまでもなく、作品を読み解くキーワードですね。
- 美桜が勤める大学のレモンの木
- 美桜の父が作るレモンのチキンソテー
では「殺人鬼」はというと、序盤で思い浮かぶのは美桜の父を殺した少年・佐神翔です。とはいえ、「レモンの木」や「チキンソテー」と佐神のつながりは見えない。。。
じゃあタイトルにはどんな意味があるのか。その秘密は、物語の最終盤で描かれています。
ぜひタイトルの意味を考えながら読んでみてください!
「虐げる側」と「虐げられる側」―レモンについて
作中では、たびたび「虐げる側」と「虐げられる側」という言葉が登場します。
■虐げられる側?
- 小林美桜:父と妹を殺され、容姿にもコンプレックス
- 小林妃奈:美桜と同様の境遇。殺害される。
- 小林恭司:殺害される。
■虐げる側?
- 佐神翔:美桜の父を殺害
- 渚丈太郎:真凛とともに美桜を笑う
- 海野真凛:美桜の容姿をからかう
- 銅森一星:ビジネスで成功
美桜は、自分が「虐げられる側」の人間であるという前提で、言動を選択しています。また同時に、妃奈を含む小林家は「虐げられる側」だと感じています。
でも、人間はその2つに分けられるのでしょうか。終盤にかけて「虐げる側」と「虐げられる側」の関係性が変容していきます。
それぞれの人物の立場や境遇を捉えながら、読み進めてみてください!
『このミス』大賞シリーズ
物語自体には関係ありませんが、補足情報として…
『レモンと殺人鬼』は、第21回『このミス』大賞・文庫グランプリ受賞作品です。
『このミス』大賞とは、次世代のミステリー作家の発掘・育成を目指した、宝島社主催の文学賞。中山七里や新川帆立などの名だたる作家陣が大賞を受賞しています。
本大賞創設の意図は、面白い作品・新しい才能を発掘・育成する新しいシステムを構築することにあります。
2020年からは大賞作品に加えて、文庫グランプリ作品を刊行しています。(大賞作品は単行本が出ます)
個人的に、『このミス』大賞や文庫グランプリ作品は好きな作品が多いので、『レモンと殺人鬼』を気に入った方は過去の受賞作も読んでみてください!
『レモンと殺人鬼』の感想
「こんな人いるか?」からの納得
正直に言うと、読みながら何度も「こんな人いるか?」と思いました。「さすがに無理があるんじゃない?」と。なんなら読み終わっても、少し思ってました。
でも、あらためてパラパラと読み返してみると、「こんな人いる?」と思った行動とそこに至るまでの行動に一貫性があることに気付いたんです。
唐突に感じた描写であっても、自分が見落としていただけでその人物は要所で片鱗を見せていました。。。
物語の進行には関係のないようなシーン(そんなものないとは思いますが…)でも、真相を知ってから読み返してみるとキャラクターの性格が表れているんですよね。まったく無理がない。納得。
あらためて、ミステリーはもっと注意深く読み進めないといけないと思いました。
感想を書き進めてみて気付いたんですが、この作品はネタバレなしで感想を書くのがめちゃくちゃ難しいですね。。。ここまでの内容も薄っぺらい。笑
主人公を含めてかなり個性的、というか独特な性格をしているのですが、そこに触れちゃうと結末のヒントになりそうな気がして。
そして読んでいるなかで、何度も違和感を抱くと思います。ただその違和感もここで書いちゃうと、、、
今はここまでにしておいて、表現する方法を思いついたら追記します。
『レモンと殺人鬼』とくわがきあゆさんの基本情報
十年前、洋食屋を営んでいた父親が通り魔に殺されて以来、母親も失踪、それぞれ別の親戚に引き取られ、不遇をかこつ日々を送っていた小林姉妹。
しかし、妹の妃奈が遺体で発見されたことから、運命の輪は再び回りだす。被害者であるはずの妃奈に、生前保険金殺人を行なっていたのではないかという疑惑がかけられるなか、
妹の潔白を信じる姉の美桜は、その疑いを晴らすべく行動を開始する。引用:Amazon
くわがきあゆさんのプロフィール
生年月日 | 1987年 |
デビュー作 | 『焼けた釘』(2021年) |
受賞作 | 第8回「暮らしの小説大賞」 『焼けた釘』 |
『レモンと殺人鬼』のあらすじ・感想:まとめ
今回はくわがきあゆさんの『レモンと殺人鬼』をあらすじ・見どころ・感想を紹介しました。