『死者にこそふさわしいその場所』がおすすめの人
不気味な作品が好き
狂気的な人が出てくる作品が好き
小説に"非日常"を求めている
今回は、吉村萬壱さんの『死者にこそふさわしいその場所』のあらすじと感想を紹介します。
ネタバレに配慮していますので、まだ読んでいない方も安心してご覧ください!
『死者にこそふさわしいその場所』の作品情報
著者 | 吉村萬壱 |
出版社 | 文藝春秋 |
初版 | 2021年08月25日 |
ページ数 | 218P |
ジャンル | 連作短編集 |
怖いものほど見たくなる、駄目なものほど癖になる。
日常の輪郭がゆがんでとろける、奇「快」な人間植物園。折口山に暮らすのは、どうしようもない人達ばかり。
(中略)
町はずれの植物園に、彼らは、吸い寄せられるようにやってくる。引用:Amazon
とにかく不気味な連作短編集。
登場人物はみんなどこか狂っていて、、、なのに、惹きつけられる。
怖いもの見たさでページをめくってしまう作品です!
吉村萬壱さんのプロフィール
生年月日 | 1961年2月19日 |
デビュー作 | 『クチュクチュバーン』第92回文學界新人賞 |
受賞歴 | 『ハリガネムシ』第129回芥川龍之介賞 |
『死者にこそふさわしいその場所』の各作品あらすじ
『死者にこそふさわしいその場所』は、6つの作品が収録された連作短編集です!
- 苦悩プレイ
- 美しい二人
- 堆肥男
- 絶起女と精神病棟苑エッキス
- カカリュードの泥溜まり
- 死者にこそふさわしいその場所
苦悩プレイ
登場人物
- ゆき子
- 富岡兼吾
物語は、カップルがウェディングフォトを撮影するシーンから始まります。
しかし実はこの2人、ゆき子と富岡兼吾は不倫関係にありました。
ゆき子と富岡は、性行為を200回したら妻と別れて結婚すると約束しており、ついに200回を超えてウェディングフォトを撮影することになったのですが、、、
美しい二人
登場人物
- 浅野哲夫
- 浅野秋代
"奇跡的な出会い"をして出会った、浅野哲夫と秋代。
約60年前の2人の出会いは、近隣住民を巻き込んだ大事件として語り継がれていました。
ロマンチックな物語に見えて、やっぱり狂ってます、、、
堆肥男
登場人物
- 春日武雄
- 瀬戸山
- 太田ユキ
- 裸の男
- 富田林
コの字型に建てられた第一・第二・第三めぐみ荘。
ほとんどが空室で、第三めぐみ荘の春日武雄と、第二めぐみ荘の富田林以外には誰も住んでいません。
そんなめぐみ荘に、新入居者がやってきます。
ただでさえ珍しい出来事なのですが、なんとその新入居者はいつも窓を開けて裸で寝ていて、働いている様子もありません。
春日武雄はその”裸の男”に興味を持ち、、、
絶起女と精神病棟苑エッキス
登場人物
- 高岡ミユ
- 中津川佐知子
必死についていっているけど、一度躓いたらもう追いつけない。
そんな速すぎる「世界の速度」に悩んでいた高岡ミユは、ある日寝坊して会社を無断欠勤してしまいます。
すると、会社の上司の中津川佐知子が家に来て、高岡ミユを精神病棟へと連れて行くのですが、、、
その精神病棟には、ある秘密がありました。
カカリュードの泥溜まり
登場人物
- 兼本歓
- 春江:妻
- 光男
「キラスタ教」折口山支部長の兼本歓は、教えに則りホームレスとの共同生活などをしていました。
ある出来事をきっかけにホームレスとの共同生活は終わりを告げたのですが、兼本は次に街を上半身裸で歩いていた「野球帽の男」に目をつけます。
野球帽の男に「光男」と名付けた兼本は、彼の生態を探り始めるのですが、、、
死者にこそふさわしいその場所
表題作の『死者にこそふさわしいその場所』は、ここまでの5編で登場した人物たちが、それぞれの目的で植物園に集まる物語。
どこか狂気的で、個性的な人々が一つの植物園に集まったとき、いったい何が起こるのでしょうか。
そして、「死者にこそふさわしいその場所」とは?
『死者にこそふさわしいその場所』の見どころ・キーワード
このキーワードを抑えれば、作品をもっと楽しめるはず!
- 折口山駅
- 堆肥
- 護符
折口山駅
6つの物語は、すべて「折口山駅」が舞台になっています。
スーパー「おりぐっちん」や植物園などの共通の場所も登場し、なかには他の作品に登場している人物も(コオロギのような女とか)
その作品では名前が出ていない店員なども、他の作品のメイン人物である可能性が高いので、どの人物なのか考えながら読むのがおすすめです!
堆肥
「堆肥男」の作品名にも含まれる「堆肥」
実は『死者にこそふさわしいその場所』というタイトルの意味を探るのに、非常に重要なキーワードになっています。
「堆肥」とはどのような意味なのか、そしてタイトルにどのようにつながるのか、考察しながら読んでみてください。
護符
作中に何度も登場する「護符」
あまりにも頻繁に登場するので、どんな意味があるのか考えながら読んでいたのですが、まったくわからない、、、
でも、表題作の「死者にこそふさわしいその場所」で、そのヒントが描かれています!
予想しながら読んでみてください!
『死者にこそふさわしいその場所』の感想
この作品を読んで僕は2つの感想を抱きました。
- 文章の不気味さ
- 非日常のように見えて、実は日常?
まず、とにかく文章が不気味。どこでどのシーンを読んでいても、薄暗い部屋で読んでいるような感覚になりました。
特に何度も登場する「チャバネゴキブリ」という言葉。文字だけで鳥肌が立つほどGが苦手な僕ですが、描かれるシーンも絶妙でそのページに触りたくなくなるほどの不快感を抱きました。(良い意味での不快感)
今回初めて吉村萬壱さんの作品を読みましたが、感想を調べていると吉村萬壱さんの文章は不気味さが一つの特徴のようです。
怖いもの見たさで、他の作品も読んでみたくなる。そんな不思議な魅力がある作家さんだと思いました!
また、登場人物やストーリーは一見すると狂気的で、非日常。
でも、そこに隠されたメッセージやテーマは、実は"リアル"だなと感じました。
狂気的な人物を通して見ると異常に見える言動でも、そのフィルターを取っ払ってみると「あれ、これ共感できるな」「これ自分もやってるかも」ってシーンがあるんですよね。
自分は共感できないシーンでも、「こういう人いるよね」って思えたり。
なので、ひとことで「不気味」だとか「狂気」だとかいう言葉でまとめるのも違う気がしてきました。。。
日常と非日常は表裏一体。だから、『死者にこそふさわしいその場所』のような一見不気味な作品が好きなんですよねえ
この投稿をInstagramで見る
みんなの感想
『死者にこそふさわしいその場所』吉村萬壱、読了。繰り返される秋祭りの護符と駅前スーパー「おりぐっちん」のイメージ。奇妙な住民たちが最後の章に大集結して騒ぎ立てるなか、一番落ち着いて語る人物の正体はまさかのあの人。ゾッとするけど(ゾッとするから?)気持ちいい読了感がたまりません。
吉村萬壱「死者にこそふさわしいその場所」誰もが変、描写も変、しかしその変てこ具合が艶めかしくリアルなので、これぞ変な俺の住んでる変な世界の実態だと思わされる。
#読了
『死者にこそふさわしいその場所』吉村萬壱心が動くことを感動と呼ぶなら、この本を読んで感じる不穏な気持ちも一種の感動と言えるのかも知れない。
狂気の矢印が自分に向かってくる感じがした。
正常な振りをして暮らしているけど、自分は本当は狂っているのだと自覚させられるような。
『死者にこそふさわしいその場所』吉村萬壱のあらすじ・感想:まとめ
今回は吉村萬壱さんの『死者にこそふさわしいその場所』を紹介しました!
次は『流卵』を読みたいなあ