『ばにらさま』がおすすめの人
ちょっと変わった恋愛小説を読みたい
恋愛に苦手意識がある
恋愛小説をあまり読まない
今回は、山本文緒さんの『ばにらさま』のあらすじと感想を紹介します。
ネタバレに配慮していますので、まだ読んでいない方も安心してご覧ください!
『ばにらさま』とは?
著者 | 山本文緒 |
出版社 | 文藝春秋 |
初版 | 2021/9/13 |
ページ数 | 218P |
ジャンル | 恋愛 ミステリ 短編集 |
冴えない僕の初めての恋人は、バニラアイスみたいに白くて冷たい
日常の風景が一転! 思わず二度読み!
痛くて、切なくて、引きずり込まれる……。
6つの物語が照らしだす光と闇引用:Amazon
恋愛や日常のちょっとした出来事が、「え…?」という展開へと向かっていく短編集です!
山本文緒さんのプロフィール
生年月日 | 1962年11月13日 - 2021年 |
デビュー作 | 『プレミアム・プールの日々』(1987年) |
受賞歴 | 『恋愛中毒』第20回吉川英治文学新人賞(1999年) 『プラナリア』第124回直木賞(2000年)など |
『ばにらさま』の各作品あらすじ
『ばにらさま』は、6つの作品が収録された短編集です!
- ばにらさま
- わたしは大丈夫
- 菓子苑
- バヨリン心中
- 20×20
- 子供おばさん
ばにらさま
登場人物
- 中島広志:僕
- 竹山瑞希:ばにらさま
太っていて冴えない中島の初めての恋人は、「ばにらさま」と呼ばれるほどの白い肌が特徴的な子。
高嶺の花のような存在と付き合えた中島は、結婚も視野に入れ始めていました。
しかし、彼女の"あるもの"が見つかり、思わぬ展開を迎えます。
わたしは大丈夫
登場人物
- 秋穂
- 達也:夫
- 夏帆:娘
- "私":?
- "彼":?
この物語は、2つの視点で描かれています。
1つ目は、秋穂が達也と夏帆とともに倹約生活を送る物語。
そして2つ目は、"私"と倹約家の"彼"との出会いを描いた物語。
この2つの物語が思わぬ形でつながり、、、
菓子苑
登場人物
- 舞子
- 胡桃
舞子は、感情の浮き沈みが激しい胡桃に翻弄されながらも、そんな胡桃を愛おしく思っていました。
一方で胡桃は、オシャレに疎い舞子にアドバイスをしたりしていて、足りないものを補い合うような”親友”の関係でした。
かつては一緒に住んでいた2人ですが、今は別々に暮らしています。
毎日のように一緒にいる2人が一緒に住まなくなったのには"ある理由"があって、、、
舞子と胡桃の"過去"に隠された秘密に、きっとあなたも騙されます。
バヨリン心中
登場人物
- 私
- 遠子:祖母
- アダム:ポーランド人
「バヨリン心中」
それは祖母とポーランド人の若き日の恋の物語。
何度話しても「ヴァイオリン」を上手く言えない祖母を見て、私の父が「バヨリン心中」と名付けました。
私は、余命僅かな祖母から初めて「バヨリン心中」を聞くことになりましたが、そこにはポーランド人の青年がいて、、、
20×20
登場人物
- 無花果たわわ:作家
作家の無花果たわわは、執筆に集中するためにリゾートマンションに籠もっていました。
長い期間過ごしているなかで住民とも顔見知りになったのですが、、、
ある日、マンションで”ある事件”が起こります。
"作家"という仕事の苦悩を描いた物語。
子供おばさん
登場人物
- 夕子
- 美和
中学時代の同級生・美和の葬儀に出席した夕子。
美和とは社会人になってからも好きなアイドルのコンサートに一緒に行くなどの交流がありましたが、ここ数年は連絡を取っていませんでした。
独身の美和の死を受けて、同じく独身の夕子は自分の将来について考え始めます。
そんなある日、美和の遺族から「あなたに託したいものがある」と連絡を受けて、、、
『ばにらさま』の感想
初めての山本文緒作品でした。
まず思ったのは、「この方の表現が好きだな」ということ。
普段あまり口にできないこと、もっというと「そう思ってしまった自分を恥じてしまう」ような感情であっても、「そう思ってもいいんだ」と思わせてくれるような文章だなと感じました。
たとえば、この文章。
結婚なんかしない、ではなく、結婚という一人の異性に振り回される関係を維持し続けることはとてもできないと思った。私はわがままだし、自分が快適なことが最優先事項だった。一人でいるのが淋しいと感じたことも、一人が不便だと感じたこともほとんどなかった。他人の感情にわずらわされる方が苦痛だ。そういう意味で友達というものの必要性も私はあまり感じたことがなかった。感じよく接している親しい人はいても、それは深く付き合わないから感じよくいられることを私は知っていた。
『ばにらさま』P51より引用
一人で過ごすことが多い僕にとって、この文章はとにかく刺さりました。
とくに「ほとんど」や「あまり」という部分。「一人が不便だと感じたこと」や「友達というものの必要性」を”まったく”感じたことがないわけではない。
ここまで自分の感情を解像度高く表現してくれている文章にはなかなか出会えません。
また、この文章も印象的でした。
なんて陳腐。馬鹿馬鹿しくて厭になる。そう感じたのが右の脳だったか左の脳だったかはわからない。けれどそう蔑んだ反対側で、つまらない刺激に新鮮に反応している己を発見した。
『ばにらさま』P61より引用
これは単純に「この表現は自分には書けない」と驚嘆した文章です。
僕は小説を書く勉強もしているのですが、売れている小説家さんはまだまだ遠いなと実感しました。。。
みんなの感想
こっちもしんどくて痛い短編集 孤独を感じる話が多くて「どうして生きるのは辛く悲しいんだろう」と考えたくなるけど、どの話も絶望だけがあるんじゃなくて最後に残る一片の情とか優しさが見えるから「それでも頑張んなきゃな」と思える 特に表題作が繊細で良い
白くて手が冷たくて可憐、バニラアイスみたい。
徐々に痛々しさが露呈していくけれど、彼女みたいな女の子にちょっぴり憧れる。不安定で不健康で不道徳、でもすごく生きている。
やっぱり山本文緒最高、全部読みたい。
恋愛、友情をモチーフにした短編集かと思いきや、予想外の展開の連続に驚ろきました
徐々に滲む不穏さに肝を冷やすけど、人の闇も光も平等に描かれ、決して後味は悪くはなく(一部の話を除き?)
なんとも濃密な一冊でした。
『ばにらさま』山本文緒のあらすじ・感想:まとめ
今回は山本文緒さんの『ばにらさま』を紹介しました!
次は『自転しながら公転する』を読みたいなあ